『松斎聞書 文化十一戌正月九日』2

一客迎に出候前に、手水鉢へ水張る時、手水鉢は杓にて濡らし候て、鉢へ水を張り申し候。手水鉢近辺、庭へは打ち申さず候。宗匠半宝庵にて初めて参り候の時、中門の内たつぷり水を打ちて、水鉢へ水を張り申され候ば、新しき庭にて落ち着き申さず候、庭も見苦しき候の事なり、いつもする事にてはこれなく申され候。


 客を迎付に出る前に、蹲踞の手水鉢の水を改めて水を張るとき、手水鉢の水を蹲踞柄杓で濡ら、鉢に水を張る。手水鉢の近辺の露地に水を打つことはしない。一啜斎が半宝庵で初めて迎付をしたとき、中門の内たつぷり水を打ち、水鉢に水を張ったのは、新しい露地なので落ち着きがなく、見苦しいので、普段する事と異なる事をしたのだとおっしゃられていた。


半宝庵での一啜斎の迎付

 現行、迎付で蹲踞の水鉢の水を改めるときには、鉢の水を蹲踞柄杓で上澄みを汲み出し、周りの灯篭はじめ役石、露地の立木に水をかけることになっている。一啜斎時分は水鉢のみに水をかけていた。半宝庵を新たに建て露地が営まれ、その最初の茶事で一啜斎が催した茶事の迎付のときの所作の模様と、その理由を記している。

半宝庵