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執筆者の写真木津宗詮

一を以てこれを貫く

『論語』の里仁編に、


子曰わく、参(しん)や、吾が道一以(もっ)て之(これ)を貫く。


という言葉があります。 先日、徳禅寺の橘宗義和尚から還暦祝いにいただいた墨蹟です。美しい赤い料紙に墨痕鮮やかに「道 一以貫之」と認められています。私に対しての大切な教訓であり、何よりのお祝いの品です。本当にありがたいことです。 さて還暦は本卦還り(ほんけがえり)とか「華甲(かこう)」と呼ばれています。 古来、年・月・日・時間や方位などの順序づけを表すのに干支(かんし)が用いられています。正しくは「十干十二支(じっかんじゅうにし)」といい、10年で一巡りする「十干(じっかん)」と、12年で一巡する「十二支(じゅうにし)」との組み合わせでできています。 そして生まれ年を「甲子(きのえね)」のように、十干と十二支で生まれ年で表し、再び生まれ年の干支が戻ってくるのは61年目になります。そこで還暦とは「暦が還る」という意味になります。「本卦還り」は本卦(元の暦)に戻るという意味で、「華甲」は「華」の文字を分解すると6つの十と1つの一が含まれることから「六十一」になり、十干の最初の「甲」を当てて61年目に干支が一巡することを表しています。 還暦は生まれた時の暦に戻るということから、「赤ちゃんに還る」とされ、「赤ちゃん」と語呂が似た赤色の頭巾やちゃんちゃんこなどの衣服を身に付けたり、贈る風習が行われています。もともとは古くから赤い色には魔除けの力があるとされ、麻疹(はしか)や疱瘡の神様が嫌う「難病除けの赤」として、赤ちゃんに赤い産着を着せることに由来しています。また還暦は男性の厄年にあたることから、厄除けとして還暦と赤い色が結びついたとも考えられています。 子供の頃の還暦の人は本当におじいさんというイメージでしたが、現代は平均寿命も長くなり、数え年61歳で「老人」というイメージはほぼなくなりました。私も全く実感がありませんが、還暦を第二の人生の出発として、この「道 一以貫之」をいつまでも肝に銘じて日々送っていかなければと思っています。



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