建仁寺派元管長竹田穎川の兎画賛です。
北討南征第二春王師
除暴凱歌新
己卯歳旦 古渡併題
北討南征第二春
王師暴を除き凱歌新たなり
北を討伐し、南を征伐し二回目の春を迎えた。天皇の軍隊は暴徒を除き凱歌も新たである。
昭和13年(1937)7月に盧溝橋事件がおき、これが発端となり日本国と中華民国間に、日中戦争が勃発しました。5月に国家総動員法が施行され、8月には第二次上海事変、11月には 日独伊防共協定成立成立し、日本は本格的に戦争に突き進んでいきました。この画賛は、翌年の昭和14年の元旦に認められた試筆です。日の丸を持ったまことに愛らしい兎の絵ですが、その賛はそうした時代背景を踏まえたものです。僧侶である穎川がどのような思いで書いたものかは不明ですが、戦争中は宗教家も自身の思いとは別に国家・戦争に協力を余儀なくされた不幸な時代であったのは間違いのないことです。この軸をご覧になった中国の方、日本人にも不快な思いをされる方がいらっしゃるかと思います。あえてこれをご紹介するのは事実は事実として認識していただき、より良い方向に進むことを念願してのことです。
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