独庵宗譲の一行「山舎半明黄葉風(さんしゃなかばあきらかにしてこうようのかぜ)」です。寂しく山中に佇む粗末な山小屋が夕暮れ近くの半ば明るい中、黄葉が風に舞っている樣です。 柞(ははそ)は里山のドングリのなる雑木であるクヌギやナラなどの類の総称です。晩秋、赤褐色や黄褐色、あるいは茶褐色と、濃淡さまざまに色づきます。もっとも身近に親しんだ樹々で、昔の歌人は「柞のもみぢ」と和歌に詠みました。色付くのは自然現象ですが、古人はそれを時雨が染めるからと理解していました。時雨の代わりに白露や霜が染めるとも思っていました。木の葉が色付くことを「もみづ」と言っていました。それを名詞形にした言葉が「もみぢ」です。今日では一般に「紅葉」と書いて「もみじ」と読ませていますが「黄葉」も「もみぢ」です。
いかなればおなじ時雨にもみぢする 柞の森のうすくこからん
藤原頼宗 (『後拾遺集』)
紅葉はしぐれの雨によって美しく色を変えるというが、柞の森は、同じ時雨にあたっているのになぜ色が薄かったり濃かったりするのだろう。という心を詠んでいます。 京都府精華町の木津川のほとりにある祝園(ほうその)神社の神苑の森は「柞」すなわちナラやクヌギの森が生い茂り、古来「もみぢ」の名所として歌枕とされています。祝園の地名も「ははそのもり」が転訛したものと考えられています。なお、柞の森は母の意にもかけて和歌に用いられています。 日本の「もみぢ」は赤・紅ですが、イギリスは黄や茶が大半で樹々の種類が異なることによりますが、「錦秋」のイメージではありませんでした。
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