本日の稽古場の床は、愈好斎の賛になる服部春陽画鴟鵂(しきゅう・みみずく)図です。鴟鵂、すなわち木兎(みみずく)は冬の季語として俳句に詠まれる鳥です。常盤山楂と寒菊を竹一重切花入に入れました。なお、服部春陽は愈好斎の門人で、川村曼舟・小村大雲・庄田鶴友・春挙門の四天王で間雲子と号しました。
鴟鵂夜撮蚤、察見毫末、
晝出瞋目而不見丘山 守(花押)
鴟鵂(しきゅう)は夜蚤(のみ)を撮(と)り、毫末(ごうまつ)を察見するも、昼出でて目を瞋(いか)らして丘山(きゅうざん)を見ず
『荘子』外篇「秋水」が賛の出典です。鴟鵂は夜中に蚤を捕まえ、細い毛先も見分けることができるが、昼間はいくら目を見張っても、大きな山も見ることができないという意味です。
この句の前には、一日に千里の道を走る騏驥(きき)や驊騮(かりゅう)と呼ばれた古代の名馬は、鼠を捕らえることができる猫や鼬(いたち)にも及ばないということが書かれています。それぞれに違った性質があり、異なる技能があるということをいってます。
木兎はフクロウ科の鳥で、頭の上に突き出た耳のように見えるものを羽角(うかく)のあるものいいます。漢字で「木兎」と書くのは、頭上の羽角から木の上の兎ということによります。ヨーロッパでは「知恵」を象徴するとされ、中国ではその鳴き声が嫌われ、不吉な鳥とされました。日本では『日本書紀』の仁徳天皇紀に登場し、古くから人と関わってきた鳥です。近年はトトロのモデルとしてお馴染みです。
みみずくは瞳孔が大きく、弱い光に敏感な細胞が網膜に多く、夜目がききます。そして両目が正面にあるので立体的に物を見ることができ、静止していても対象物までの正確な距離を把握し、その感度は人間の100倍だそうです。耳の穴は左右でずれた位置にあり、奥行きも違い、音源の方向を立体的に認識することができます。またパラボラ型の顔面の羽毛が対象物のわずかな音を集め、音を聞き取る役目をしています。そして柔らかな羽毛でほとんど音を立てることなく飛ぶことができるのです。こうしたことから木兎は森の夜間ハンティングの王者として君臨しています。
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