南禅寺334世、南禅寺派7代管長加藤至道筆になる一行「弄花香満衣(はなをろうせばかおりころもにみつ)」を掛け、井村侊生作信楽蹲花入に西王母と白梅・水仙を入れました。
出典は、唐代の詩人于良史作『春山夜月』という題の五言律詩です。
春山勝事(しようじ)多し
賞翫(しようがん)して夜帰るを忘る
水を掬(きくすれ)ば月手に在り
花を弄すれば香衣に満つ
興来たらば遠近無く
芳菲(ほうひ)を惜しみ去(ゆ)かんと欲す
南に鳴鐘(めいしよう)の処を望めば
楼台(ろうだい)は翠微(すいび)に深し
春の山に入ると素晴らしいことがたくさんある。それを愛でていると夜になっても帰宅することを忘れてしまう。手のひらに水を掬う春の朧月が映り、満開の花を手に取ると香りが着物に満ち溢れる。興が絶好調に盛り上がると咲き誇る草花の芳しい香りを愛でてどこまでもいきたくなる。寺の鐘の音が響く南を望むと、遠くに若葉の緑にかすむ鐘楼が見える
特にここ数日は4月を思わせる陽気です。例年に比べ梅も開花しています。梅花は美しいだけでなく、まことに清々しい香りを漂わせます。満開の梅花を手に取ると香りが着物に満ち溢れる。まさにそのような風情を彷彿とさせる句です。
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