• 木津宗詮

アマビヱ

 京都大学付属図書館の京都大学貴重資料デジタルアーカイブで公開されているの幕末の弘化3年4月にの瓦版です。

https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00000122#?c=0&m=0&s=0&cv=83&r=0&xywh=-8160%2C0%2C25831%2C7621


 肥後国海中え毎夜光物出ル所之役人行

 見るニづの如の者現ス私ハ海中ニ住アマビヱト  申者也当年より六ヶ年之間諸国豊作也併  病流行早々私ヲ写シ人々ニ見セ候得と  申て海中へ入けり右ハ写シ役人より江戸え  申来ル写也弘化三年四月中旬 弘化3年4月に肥後国(熊本県)の海中に毎夜光るものがあり、役人が赴いてみいると図のようなものが現れました。そのものはアマビヱというもので、今年から6年間諸国は豊作で病気が流行する。早々に自分を写して人々に見せなさいと言って海中に入っていきました。この絵はその時に写されたもので、肥後の役人から江戸に申し来たものの写です。

 足元に及ぶ長い髪で、菱形の目に鳥のくちばしのような口をした顔、首から下は鱗に覆われ、先端が尖った三つに分かれたヒレのような三本の足、まるで人魚のような姿で海面に立っています。人魚かはたまた妖怪か。得体の知れない者です。その上、豊作や病気の流行を予言する不思議な能力を備えています。

 同様のものに、国立民族資料館のバックナンバーに、

https://www.rekihaku.ac.jp/outline/publication/rekihaku/170/witness.html



 此度肥前国平戸におゐて沖にうきあかる   姫魚龍宮より御使なり   此魚ものを云   七ケ年の間豊年なり   其印にハ北斗星の片傍に箒星出る   しかしころりと云病はやり人多く死す   我姿を絵に書一たひ見ハ此病をのかるへし   と云て直に海中へしつミにけり                魚金色也                長一丈三尺                髪長一丈斗                背ニ宝珠ノ玉三ツ有リ  文政二年 卯之月十五日出ル

 こちらは文政2年(1819)に肥前国(長崎県)平戸の沖に浮き上がった龍宮よりの使いの姫魚です。7年の間は豊作で、その証拠に北斗七星傍らにほうき星がでる。そして「ころり」という疫病が流行し多くの人が死ぬ。そこで自分の姿を絵に写し、これを見ると「ころり」からのががれることができると言って海中に沈みました。金色の魚で、長さは一丈三尺(3.3メートル)、髪の長さは一丈斗 (約3メートル)、背には三つの宝珠の玉があったとあります。

 そして嘉永2年(1849)には越後国(新潟県)福島潟に現れたものは、




 嘉永二酉年閏四月中旬    越後福島潟人魚之事    越後国蒲原郡新発田城下の脇ニ、福島潟と云大沼有之、いつの頃よりか夜な〳〵女の声にして人を呼ける処、誰有て是を見届る者無之、然ルニ或夜、柴田忠三郎といへる侍、是を見届ケ、如何成ものぞと問詰けるに、あたりへ光明を放ちて、我は此水底に住者也、当年ゟ五ヶ年之間、何国ともなく豊年也、且(但カ)十一月頃より流行病ニて、人六分通り死す、され共我形を見る者又ハ画を伝へ見るものハ、其憂ひを免るべし、早々世上に告知らしむべしと言捨つゝ、又水中に入にけり。

   人魚を喰へば長寿を保つべし

     見てさへ死する気遣ひはなし   右絵図を六月頃、専ら町中を売歩行 越後国蒲原郡新発田城下の脇に福島潟という大沼があり、いつ頃からか夜な夜な女の声で人を呼ぶ声がした。誰もそれを見届けるものがなく、夜柴田忠三郎という侍がその正体を見届けた。そしてお前は何者だと尋ねると、あたりに光明を放って、自分はこの大沼のそこに住むものである。今年から5年の間諸国は豊作である。ただし11月ころから流行病で人が六分通り死ぬ。そこで自分の姿を見るもの、またはその絵を見るものはその病から逃れることができる。早々に世間に知らせるようにと言い捨てて再び水中に入った。人魚を食えば長寿を保ち、見るだけで死ぬ心配はない。この絵図を旧暦6月ころから町中を売り歩くものがいた。なお、人魚の肉を食べると長寿を保つというのは「八百比丘尼」に通じます。

 これも先のアマビヱや姫魚と同様豊作と流行病の予言をし、その疫病除けの方法を教える内容になっています。ただし、1枚目は頭に角がなく、乳房と手が描かれていて、腰からしたは巨大な貝に似た形で水面に浮かんでいます。2枚目も角がなく、髪は肩までで同じく手が描かれ、腹部には鱗らしいものがあり、腰のあたりには尻尾らしきものもあり、水面に浮かぶ雲に正座しています。2枚とも人魚と言うよりは人間に近い姿で描かれています。

 最後に「右絵図を六月頃、専ら町中を売歩行也」とあり、疫病が流行する夏場にこれらの絵図を有り歩く者のいたようです。庶民の疫病流行不安に目をつけて、変異のもの出現と予言を摺物にして広め、不安を煽りながら稼いでいた人がいたのがわかります。

 今回の新型コロナの流行でも専門でもない素人のコメンテーターや一部の専門家が、大局的な観点でなく、現状を踏まえず。またより客観的な観点に立たずに無責任な発言を連日しているのに通じているように思います。稼ぐという意味では視聴率をとるという点で共通しています。アマビヱの絵を描いて新型コロナウイルスを食い止めようという動きがネット上に現れています。1日も早く治ることや収束することを祈るのは別として、祈祷や加持で病を治そうとするのは医学・科学が進歩した時代にある意味驚きです。

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