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執筆者の写真木津宗詮

正月準備

 望月玉渓の茶筅売り図です。


 むかしの京の風物詩に、12月13日の事始めから大晦日(おおみそか)まで茶筅を売り歩く茶筅売り(空也堂衆・鉢叩)というものがありました。これは踊念仏の開祖空也上人の空也忌である11月13日から大晦日まで48日の間、上人ゆかりの空也堂の茶筅売りが、洛中洛外を鹿の角をつけた鹿杖(かせづえ)をつき、瓢箪を撥(ばち)で叩きながら念仏や無常和讚(わさん)が唱えて勧進する合間に茶筅を売っていたのです。


  長講堂の門前で鹿杖を地に突き立て、瓢箪を叩いて筵に喜捨を受ける2人の空也堂衆

  ・鉢叩 「上杉本洛中洛外図」より

廬山寺の前を通る鉢叩きと鉦叩き(時宗の空也念仏の流れを汲む聖たち)「上杉本洛中洛外図」より

六角堂の門前を歩く茶筅売り。竹ざおにつけられた藁のツトに竹ぐしを刺し、そこに茶筅を挿して担いでいる。鉢叩きは日常茶筅を作り、年末にこれを商った。 「上杉本洛中洛外図」より


 この茶筅は年の瀬の正月準備の品として求められました。茶筅売りの勧進の結願の一夜開けた元旦の早朝には、禁中はじめ広く貴賎の別なく家々で新年を寿ぐ「大福茶」にこの茶筅が用いられるのがかつての京都の習いでした。  なお、茶筅売りは竹ざおにつけられた藁(わら)のツトに竹ぐしを刺し、そこに茶筅を挿して「大福茶筅」と声を発してうり歩いたそうです。腰には空也堂の僧侶であることを証す瓢箪を付けていました。茶筅を所望する家があると、ぬっと、ツトごと突き出して好みのものを選ばせましたそうです。この茶筅でお茶を点てると無病息災の御利益があるといわれていました。


 近年まで行われていた空也堂の茶筅売り

 空也堂は、蛸薬師通堀川東入るに位置し、天台宗の寺で正式には紫雲山極楽院光勝寺といいます。半俗半僧のまま念仏をひろめた空也上人像を本尊としています。

 狂言『鉢叩』は、


  都の春の鉢叩き、叩き連れたるひと節を、茶筅召せ


とはやしながら北野社の末社紅梅殿(こうばいでん)に参籠して鉢叩きが歌い舞う様子を伝えています。

 今日は12月30日です。いよいよ暮も押し詰まってきました。いずれの家庭も正月準備にいそしんでいることでしょう。

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