• 木津宗詮

聲(声)

最終更新: 2019年12月8日

 聲

  寒天僊夜更

  無佗事唯思

   為夢伴子書之(印)


 聲

  寒天夜更(やこう)に僊(うつ)る

  佗事(たじ)無く唯思う


夜が更けて真夜中になった。真っ暗なかなかますます寒くなってきた。他には何もない。物音も動くものも何もない。どこまでもどこまでも静寂。ただただ一心に、一心に思っているだけだ。声のことを思っている。その声とは仏の声。仏の声とは永遠の真理であり悟りの境地。心身ともに冷え込んできた深夜、ただ仏の声を聞きたい、それだけを思っている。


 本日の稽古に用いた墨跡です。ウブのままで状態はあまりよくありませんが私の大好きな軸の一つです。筆者は大徳寺147世で塔頭芳春院の開山玉室宗珀(ぎょくしつそうはく)。これは法甥になる天祐紹杲(てんゆうじょうこう)に書き与えた墨跡です。夢伴子(むはんし)は天祐の号で、のちに大徳寺169世となり、森鴎外が細川藩でおきた悲劇を描いた『阿部一族』に登場する人物です。

 釈迦は菩提樹の下で7日間の坐禅ののち、8日の未明に悟りを開きました(成道)。臨済宗や曹洞宗・黄檗宗の僧堂では、12月1日から8日の朝「鶏鳴」までの一週間を一夜とみなし、消灯時間の「解定(かいちん)」の鳴り物が響かず、托鉢も作務もなく、食事を除いて不眠不休でぶっ通しで座る続けて釈迦の恩に報いあやかる「臘八大接心(ろうはつだいせっしん)」が行われています。友人の和尚の話しによると、病気や肉親の不幸にも帰省できず、1日に5回も6回も老師の部屋に入って与えられた公案の見解を呈する独参が行われます。まさに「雲水殺し」の峻烈な修行だそうです。



 今日は最終7日の夜です。夜が更けるにつれ深深と冷えてきました。僧堂の修行僧たちは、今夜も「声」を一心に、一心に聞こうとクタクタになった体に鞭打って座禅に励んでいます。

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