藩主御成の時に使われる「上の間」です。10畳敷で、一間の床その左に違棚、右には付書院、長押付きの構えです。
天井は砂刷りの板で竿縁は丸太の面取り、床の落としがけ等には銘木が用いられ、床框は真塗。長押には菊の釘隠し。また、濡れ縁も二段となり、濡れ縁に座る立場の者、給仕するものや濡れ縁に座ることのできない立場の者がその下といった身分による格式、次の間と櫻井家の者が使う空間とに段差をつけるなど各所に当時の格式を重んじる世相が反映された建物です。
長押や床框の真塗、そして構えに藩主が使う部屋としての格式がありますが、天井各所にわびた趣があり、この部屋で公式の拝謁や、また寛ぐ不昧公の趣味を十分に意識して作られた座敷であると思われます。
この建物を建てるにあたり、どの時点で御成の通知があったかはわかりませんが、事前に櫻井家では茶頭始め作事に関わる人や近習に十分リサーチし、不昧の好み嗜好を踏まえてこの座敷を作ったもの考えられます。櫻井家では藩主の御成を仰ぐというこの上もない栄誉なことで可能な限り力を注ぎ、材木を十分に選び、職人も吟味して建てられたものに違いありません。また、庭の瀑布の造作にもさその思いを見ることができます。
格式を守りつつもそこにわびた趣を加味して作られた素晴らしい座敷です。
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