• 木津宗詮

多宝塔

 多宝塔とは円筒状の塔身の部分に宝形(ほうぎょう)の屋根をのせた宝塔の周囲に裳層(もこし)をつけた形式の建物をいいます。

 かつて流儀機関誌『起風』に武者小路千家家元の茶室「半宝庵」の席名のいわれを書きました。長年にわたり「半宝」という語をいくら調べても出典がわかりませんでした。今から4年前の11月に友人とカンボジアにサッカーを観戦に行った時、偶然、氷解する体験をしました。

 その時にひらめいた「半宝」のいわれは、『法華経』宝塔品に書かれていることに違いないということでした。それは釈迦が霊鷲山(りょうじゅせん)で法華経を説いている時に、様々な宝玉で飾られ、五千の欄干(らんかん)、幾千の飾り棚、無数の旗や吹流(ふきながし)や宝石の環(かん)、幾千の大小の鈴が吊り下げられた巨大な宝塔が大地より出現し、空中に浮かびました。塔の中の多宝如来が釈迦を讚嘆して釈迦を塔中に招き入れ半座を分け、釈迦が説法したという故事です。


       多宝如来が釈迦如来を地中から湧出した大宝塔に招いている 

       甘粛省荘浪県出土五層四面塔 北魏時代・6世紀前半 荘浪県博物館蔵


         一塔両尊 中央に題目宝塔と、釈迦如来・多宝如来


 今日は緑綺麗学舎の主催になる第一回の文化講座の名児耶明先生のお話をうかがいに東京の池上本門寺の実相寺を訪れました。本門寺の経蔵の裏の六層になった石段坂の大坊坂を下り実相寺に向かいました。大坊坂の三つ目の踊り場から右に下る石段の先を見下ろすとかつて目にしたことのない不思議な朱塗りの多宝塔がありました。その瞬間、私はこの『法華経』宝塔品の多宝塔を彷彿としました。『法華経』の荘厳とは異なりますが、私にはこのような塔が地面から湧出したのだと思えてなりませんでした。そして多分二度とないであろうあの時のカンボジアでの感動的な体験思い出したのでした。





 ちなみにこの多宝塔は日蓮を荼毘に付した場所に建てられた供養塔とのことです。その説明板には以下のように記されています。


             重要文化財

              池上本門寺多宝塔  宗祖日蓮大聖人の御尊骸を荼毘に付した霊蹟に建つ供養塔。建立は宗祖五百五十遠忌を期

 して行われ、江戸芝口講中の本願により、文政十一年(一八二八)に上棟、同十三年(天

 保元年)に開堂供養を修している。石造の方形基壇に築いた円形蓮華座の上に建つ木像宝

 塔形式の建物で、内外ともに漆や彩色によって華やかな装飾が施されている。塔内中央に

 は金箔や彩色で装飾された華麗な木像宝塔を安置し、日蓮大聖人御所持の水晶念珠を泰安

 している。宝塔形式の木像塔婆は極めて現存例が少なく、当山多宝塔はその中でも最大規

 模を誇る本格的な宝塔として、極めて貴重な建物である。なお、「多宝塔」の名称は建立

 当初から呼称されているものであり、文化財としての名称は「池上本門寺宝塔」である。                            平成二十三年三月 

                                  池上本門寺



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