元旦

  惣而(そうじて)朝・昼・夜トモニ、茶ノ水ハ暁汲タルヲ用ル也、コレ茶ノ湯者ノ

  心ガケニテ、暁ヨリ夜マデノ茶ノ水、絶ヌヤウニ用意スルコト也、夜会トテ、ヒル

  已後(いご)ノ水不用之(これをもちいず)、晩景(ばんけい)半夜マデハ陰分

  (いんぶん)ニテ、水気沈ミテ毒アリ、暁ノ水ハ陽分ノ初ニテ清気ウカブ、井華

     (せいかすい)也、茶ニ対シテ大切ノ水ナレバ、茶人ノ用心肝要也


 『南方録』覚書です。「井華水(せいかすい)」とは寅の刻に汲んだ水をいいます。寅の刻とは午前4時のことで、厳密には日の出から約3時間前から1時間前までを指します。

 寅の刻の前の丑の刻は陰気がもっとも深く強くなる時刻で、丑と寅との時刻を境として陽気が徐々に上がってきます。ちなみに「草木も眠る丑三つ時」は陰気がもっとも極まった時刻で、陰気の最たるものである幽霊や物の怪が出ると考えられたのです。陽気はプラスの力、陰気はマイナスの力です。しかしながら陰陽いずれかに偏るのはかえってよくなく、プラスの力とマイナスの力のバランスのとれたものなのがいいとされています。そうしたことから寅の刻の水は陰陽が混じり始めたバランスのとれた水なのです。そうしたことから古来、最も澄んだ清浄な水で、これを飲めば若返る豊かな生命力を持つ水と信じられてきましたのです。なお、陽気がどんどん増していくのは日の出以降で