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執筆者の写真木津宗詮

六根

 六根とは人間の認識の根幹で、眼(視覚)、耳(聴覚)、鼻(嗅覚)、舌(味覚)、身(触覚)、意(意識)の6つの感官能力をいいます。これらは人間の知覚および認識 (六識 ) を成立させるよりどころとなるもので、それぞれ色や声、香、味、触、法 (六境 ) を感知します。

 六根は我欲などの執着にまみれていては、正しい道(八正道)を往くことはかなわない。そのため執着を断ち、心を清らかな状態にすることを「六根清浄」といいます。そこで不浄なものを見ない、聞かない、嗅がない、味わわない、触れない、感じないために俗世との接触を絶つことが行なわれ、山籠りなどをして山岳修行をしました。

 この茶碗は布志名焼雲善の作になる乾山写色絵大根茶碗です。6本の大根は、『六根清浄』を意味し、松平不昧公の好みで大名への贈答に使われたそうです。

 大根の原産地は地中海地方や中東と考えられています。紀元前2200年の古代エジプトでピラミッド建設労働者の食料として栽培されていたのが最古の記録とされ、その後ユーラシアの各地へ伝わります。日本には弥生時代には伝わっており、平安時代中期の『和名類聚抄』の菜蔬部に、園菜類として於保禰(おほね)が挙げられているとのことです。大根は春の七草の一つ「すずしろ」でもあります。なお、中国では、春節(旧正月)にも食べられ「菜頭」とよばれ、幸先が良いという意味の「彩頭」に発音が似ていることから縁起の良い野菜とされています。

 千本釈迦堂では毎年12月7日と8日に釈迦が悟りを開いたことを慶讃する成道会で、4本の大根を縦半分に切って8本とし、切り口に釈迦の種子(梵字)を書いて供え、参詣者への「悪魔除け」とされました。その後「悪魔除けの大根」は、他の大根と一緒に炊き上げて、参詣者に振る舞われたのが「大根炊き」のはじめとされています。諸悪病を取り除き、健康増進を願い両日に法要が行われ味付けして煮込んだ大根が授与されています。

 大根の美味しい季節となりました。なんの汚れもない美味しいい大根も人の六根に例えられて複雑な思いでいるに違いありません。



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