東籬
盧を結びて人境にあり
而も車馬の喧(かまびす)しきなし
君に問う何ぞ能く爾(しか)るやと
心遠ければ地も自ずから偏なり
菊を采る東籬の下
悠然として南山を見る
山気に日夕(にっせき)に佳く
飛鳥相い与(とも)に還る
此の中に真意あり
辨全と欲して已に言を忘る
地位や名誉から離れて酒と菊を愛した陶淵明の「飲酒」二十首の中の一つです。
陶淵明は人も訪ねない田舎に草庵を結び世俗のことなどは忘れてしまい、自然の中に溶け込んでいます。一枝菊わ採ろうとすると眼前に名峰終南山が聳えてます。この素晴らしい風光は心を休ませてくれる。身も心も自然に溶け込み同化してしまいました。
菊花の美しさとその香りにはそうした不思議な力があるのでしょう。
吉向十三軒が薩摩焼に模した白磁の茶碗です。木津三代聿斎宗泉がその菊の文様から「東籬」と命銘しています。
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