篝火

篝火にたちそふ恋の煙こそ

世には絶えせぬほのほなりけれ


行く方なき空に消ちてよ篝火の

たよりにたぐふ煙とならば

『源氏物語』二十七帖「篝火」の光源氏どうこう玉鬘の贈答歌です。篝火とともに立ち上る恋の煙は永遠に消えることのないわたしの思いなのです、と篝火の煙に自分の恋心を表わした光源氏に対して、玉鬘は、許されぬ恋のような煙は空に消えてくださいと、拒絶します。

庭に篝火を焚いて、添い寝する光源氏と玉鬘との間に交わされる微妙な恋の駆け引きが描かれています。そしてほのかな篝火の火影に見える女性の姿を情趣深く表している箇所です。

篝火は鉄製の籠の中で薪をたいて照明する火をいいます。またその鉄製の籠を篝といい、脂 の多い松の割り木が燃やされます。「かがり」は「輝り」の意からとされています。古来の照明具の一つで屋外で固定して用いられました。それに対し手に持って移動するときは松明 (たいまつ)が使われました。

篝火に限らず、松明もろうそくの炎も、電灯の明かりとは異なり、風に揺れる炎がなんともいえない奥深い幽玄な風情を醸し出します。