• 木津宗詮

羽織

 島根県出雲市に十六島(うっぷるい)という岬があります。島根半島西部の海岸に突出した岬で、大岩石や奇岩が林立し日本海の荒波にもまれ、山陰でも屈指の海岸美を呈しています。十六島の語源は、海藻を採って打ち振るって日に乾す「打ち振り」がなまったとか、朝鮮語の古語で「多数の湾曲の多い入江」という意とかアイヌ語等の説があります。十六島の漢字は海苔島が十六あったところからあてられたとも言われているそうです。なお、古くは於豆振(おつふるひ)といいました。

 十六島では浅草海苔の仲間である十六島岩海苔が採られています。『出雲国風土記』にも記載されていて日本で最も古い海苔とのことです。採取期は12月初旬から翌2月頃で、冬の日本海の荒波の打ち寄せる中でのとても危険な作業です。昔は草鞋履きで、縄で命綱に荒縄を体に縛って採ったそうです。出雲地方では「かもじ海苔」といい、お正月の雑煮に入れられるそうです。

 危険を伴い、短期間に採取されることからたくさん採ることができないことから高級品とされています。そうしたことから値段も高額で、なんと100グラム1万2千円もします。

 十六島海苔は写真のようにとても長くて大きく、まるで黒い大きな紙や布のような形状です。初代松斎宗詮の恩人である松江藩7代藩主松平不昧公が江戸在府の時、大崎の下屋敷でこの十六海苔を羽織に仕立てて宴席に出て、羽織の袖をちぎって手あぶりであぶって酒の肴にして楽しんだという逸話があります。まことに洒落た趣向です。さすが江戸時代屈指の大名茶人、風流殿様です。







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