• 木津宗詮

荘子

 前回、好評だったことから京都鶴屋の八木さんの季節のお菓子をこれからときどき紹介します。

 今回は「荘子」です。黒いこし餡種を黄色いこなしで包み、上にいも餡で型で抜いた蝶をのせた春らしいお菓子です。こなしは少し歯ごたえがあるのに口どけがよく、中の黒餡 と合わさると小豆の風味を感じる事できます。

 荘子(荘周)は中国の戦国時代の宋国生まれた思想家で、いわゆる諸子百家の一人です。道教の始祖の1人とされる人物です。その著書の『荘子』の中の説話に、


ある日、荘子は夢を見ました。夢の中で、荘子は蝶になっていました。快く花の間をひらひらと飛んで楽しみ満足していました。ところが蝶になった荘子は自分が荘子であることを知りません。ふと目が覚めて我にかえってみると、驚くことに自分は紛れもなく荘子であった。自分は蝶になった夢をみていたのか、それとも今の自分は蝶が見ている夢なのか。


この説話は目的意識に縛られない自由な境地を説いています。荘子であるとか蝶であるとか、また善であるとか悪であるとか、美であるとか醜であるとかなどは、所詮、「知」のなせる技であり、本質においては何ら変わりはありません。「知」を離れた境地に達すれば自然と融和して自由な生き方ができると荘子は説いているのです。

 この説話がもととなったことわざに「胡蝶の夢」というのがあります。こちらはそんな哲学的な深い意味で使われている語ではなく、夢と現実との境が判然としないたとえとかこの世の生がはかないたとえとして用いられています。

 お菓子としての「荘子」は春爛漫、百花繚乱のこの季節に花から花へ舞う蝶をイメージしたお菓子です。なお、京都鶴屋には粒餡を麩焼きで長方形に包み中央にかわいい蝶の焼印を押したまことにシンプルな同名のお菓子もあります。




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