• 木津宗詮

  七月廿日餘春日野の   虫を庭に放ちけるとて   招かれける夜            景柄   松虫の聲のあはれに春日         野の   おも影さそふ庭の秋かせ   秋深く月になる夜を         契をかん   鳴なふるしそ鈴むしのこゑ    折しも白雨のしけれハ   山風のさそハゝ帰る市路             まて   涼しさ送れゆふ立              のあめ


 香川景柄(かがわ かげもと)の虫三首詠草です。

 香川景柄江戸時代中期の歌人。実父は京都山崎の社家松田対馬の子で、養父は香川景平です。養子に香川景樹(かげき)、香川景欽(かげよし)、香川景嗣(かげつぐ)の3人がいます。通称は俊蔵や府生、号は黄中、法名は浄阿。公家の徳大寺家に仕えていましたが、後に歌道に専念し、梅月堂4世となり、慈延(じえん)や小沢蘆庵(ろあん)らと並ぶ京都歌壇の重鎮として遇されました。子がなかったため、養子に迎えた香川景樹の将来に期待したがましたが景樹が、異風を志すに至り心ならずも離縁します。ところが景樹は生涯香川姓を名乗り、墓所も香川家代々の東大路通仁王門上がるの聞名寺に建てられています。なお、次に迎えた養子達にも満足できず、景嗣がようやく梅月堂5世となりました。家集『黄中詠藻』あります。

 今年の旧暦7月20日は先月の20日でした。そのころはまだ春日野は虫の音どころか残暑がすこぶる厳しい時分でした。ここ数日朝夕が涼しくなり、昼間も気温が低くなり、私の住まいする吉田山でも虫がすだき、秋の趣が増してきました。なお、白雨は夕立のことで、夕立が涼しさを送るということから、やはり昼間は残暑の時分ということが伝わります。



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