武者小路千家七代家元直斎の好みになる名取河香合の写しです。かつては一般に埋木は入手できなかったので、桑の古木で作られています。作らせたのは直斎の娘婿で川越藩京留守居役、学者としても当時著名で『平安人物志』に何度も記載され、与謝蕪村と親交があり、芭蕉堂を再建した樋口源左衛門道立です。茶の湯は舅の直斎、次代の一啜斎に師事しています。
道立は名取河の本歌が六個半できた時、その一つを所持した人です。ですから自身が所持した本歌をもとに忠実に写させたものと思われます。作者は不明ですが、六個作られています。なお、六個半というのは、材の埋木が限られていたので、完品が六個、身だけのものが一つで六個半ということです。
かつて私の住まいする吉田山で道立の墓と位牌を発見しました。子孫は絶えて無縁になっています。その時はとても感動しました。
縁というものは本当に不思議なものです。先日、私の手元にやってきました。とても嬉しいことと喜んでいます。
Comments