杜若・カキツバタ

 大田神社は上賀茂神社の境外摂社です。御祭神は鈴鹿の椿大神社と同じ天鈿女命(アメノウズメノミコト)です。参道の左手東側に国の天然記念物に指定されている「大田の沢」が広がっています。古くは上賀茂神社や太田神社のある上賀茂の地は沼地で賀茂氏によって開墾されたそうです。そして太田の沢は今日も野生の杜若が群生しています。なお、大田の沢は約2千平方m2の面積で、畳に換算すると1212畳。そこに約25,000株の杜若が自生しています。

 平安時代の藤原俊成が大田神社の杜若を詠んだ歌に、


神山や大田の沢のかきつばた

ふかきたのみは色にみゆらむ


上賀茂神社の御祭神が御降臨された神山。その神山の近くの大田の沢の杜若に深く祈る恋事(いろ)は、かきつばたの色のように一途、一色で美しく可憐なんだろうか。このように大田の沢の杜若は、古くから多くの和歌に詠まれています。

 杜若の語源は「掻(か)きつけ花」が転訛したもので、「掻きつける」とは「摺(す)りつける」という意味です。花汁を布にこすり付けて色を移し、「摺り染め」にすることをいいます。「カキツケハナ」が「カキツハナ」となり「カキツハタ」と変わり、現在の「カキツバタ」となったのです。なお、かきつばたは「杜若」とか「燕子花」の文字でかかれますが、「杜若」はショウガ科、「燕子花」はキンポウゲ科の中国原産の植物で「かきつばた」とは全く無縁の別種の植物です。和歌では紫の象徴として詠まれ、また春の最期に詠まれる花です。

 


加藤千蔭賛になる酒井抱一画杜若図です。


杜若かげ見る池や紫の

匂ふ乙女が鏡なるらむ


可憐にそして清楚に紫に映える池が、まるでかきつばたを眺める乙女の姿を写した鏡のようです。

 残念ながら今年は新型コロナウィルス感染拡大のため、大田の沢は拝観停止となっています。去年の杜若をご覧いただきます。















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