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6月9日稽古場の床

本日の東京稽古は、松平不昧公の詠草を床に掛けました。花は花菖蒲を宗全好み蝉籠です。

思事宇多幣婆那藝奴言霊之

幸波布験麻佐斯加利計理

蘭室主人

思事うたへばなぎぬ言霊(ことだま)の

幸(さき)はふ験(しるし)まさしかりけり

松平不昧公の詠草です。署名の「蘭室主人」は不昧公が若いときに使っていた号です。普段よく見る不昧公の定家様の筆跡と趣が異なりますが、不昧公の書に詳しい専門家に見てもらったところ若い頃のものとお墨付きをいただきました。また万葉仮名で認めている作はとても珍しいとのことです。以前、ある道具屋さんが出雲の旧家から出たもので、宗匠の家は不昧公と格別のご縁だからといって勧められて求めた軸です。前の所持者がずっと床に掛けっぱなしにしていたため相当焼けています。私はウブの表装が好きなのでそのまま使っています。

言霊とは言葉に宿ると信じられた霊的な力のことです。「言霊の幸ふ国」といって、むかしの人は日本は言霊の力によって幸せがもたらされる国と信じていました。良い言葉を発すると良い事が起こり、不吉な言葉を発すると凶事が起こるとされました。自分の意志をはっきりと声に出して言うことを「言挙げ」といい、それが慢心によるものであった場合には悪い結果がもたらされると信じられてました。これは「言」と「事」が同一の概念だったことによるものです。万物に神が宿るとするむかしの人の信仰が根源にあります。

「ありがとう」という言葉は、漢字で書くと「有り難う」で、そもそも「有ることが難しい」という意味です。だから思いもしない嬉しい体験すると無意識に思わず、「ああ、有り難い」という言葉が口からこぼれます。高齢者の方が日々健康に暮らしているとか、毎日美味しくご飯を食べれるとかを「有り難い」と口にします。そこには本来は目に見えない神や仏などの計らいへの感謝が込められているのでしよう。だから私たちが普段なにげなく使う「ありがとう」という言葉の重さを感じることができます。言葉の意味を知って使うと、気持ちも相手に伝わる、日頃から前向きで、美しく、優しい言葉を使っていると、物事がいい方向に向かっていく、それが言霊だと私は思います。

不昧公は、心に思った事を美しい言葉で歌に詠めば言葉の不思議な力が必ず、幸せをたらせてくれるのだと詠んでいると私は解釈しています。

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