top of page

山吹重ね

桜ちり春のくれ行く物思ひも

忘られぬべき山吹の花

          藤原俊成




 桜も散り春の盛りを過ぎようとする頃、新緑の葉の中に、春の暖かい日差しに眩く山吹は黄金色の花を咲かせます。心も虚しく憂鬱になるのをその美しい花は思わず忘れさせてくれます。

 有職には装束の重ねに用いられた独特の美しい色調が現れる「襲色目(かさねいろめ)」があります。山吹は平安の人々に好まれ、その華やかな色彩が愛され、春を代表する襲色目として男女ともに盛んに装束に用いられました。『源氏物語』の末摘花に、


晦日の日、夕つ方、かの御衣筥に、『御料』とて、人のたてまつれる御衣一領、葡萄染の織物の御衣、また山吹か何ぞ、いろいろ見えて、命婦ぞたてまつりたる。


華やかで豪華な演出の時に山吹色は用いられたようです。なお、山吹の襲色目には「山吹」「裏山吹」「山吹匂」「青山吹」とかがあります。


   山吹


   裏山吹


   山吹匂


   青山吹


 本日の稽古のお菓子は、京都鶴屋鶴寿庵の「山吹重ね」です。中が緑、外が黄色の餡を茶巾絞りにしたこなしです。有職の「青山吹」の襲色目のまことに上品な色合いの美味しいお菓子です。


   山吹重ね


 なお、京都鶴屋鶴寿庵は新選組発祥の地「壬生屯所旧跡八木家」が先代主人が創業したお菓子屋です。色合い、つや、味、粒のいずれもを厳選し品格のある「丹波大納言小豆」を使用し、敷地内の井戸水を使用し、素材本来の味を十二分に引き出し、四季折々の風情の和菓子を作っています。当代主人の八木さんは20年来の社中で、いつも稽古のたびに趣向にあった美味しい和菓子を作ってくれています。私も稽古人も毎回八木さんのお菓子を楽しみにしています。

 ただいまは新型コロナウィルスの感染で外出がままならなくなっていますが、いずれ終息したらぜひ訪ねてみてください。新撰組ゆかりの壬生屯所が見学できます。そして四季折々の出来立ての美味しい和菓子でお茶を飲むこともできます。興味のある方は以下をご参照ください。



うちの稽古場だけが美味しいお菓子を食べているのはちょっと後ろめたい気分です。みなさんにもお裾分けです!笑











閲覧数:507回0件のコメント

最新記事

すべて表示
bottom of page