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惜字炉(せきじろ)

更新日:2020年12月11日

 もう25年ほど前に亡くなった老僧が常に言っていたことです。「文字には魂が宿っている。決して粗末にしてはいけない。たとえ新聞であろうと畳の上にだかに置いてはいけない。況やまたぐなどもってのほかである」と。文字を神聖で尊いものとして大切にしていたのです。

 大阪の四天王寺の近所に清寿院という黄檗宗の寺があります。通称が「関帝廟」です。関帝廟というと横浜や神戸で華僑の人たちが建てた関帝廟が有名ですが、清寿院の関帝廟は華僑が建てた関羽の廟でなく、寺が建てた日本で唯一のものです。

 この寺には「惜字炉(せきじろ)」という焼却炉があります。大阪市指定民俗文化財・有形民俗文化財の指定を受けています。惜字炉とは文字を記した文書や版本などの字紙は神聖であり、特別の焼却炉をつくり、不用の字紙について、敬意をもって供養しながら焼却する、というかつて中国で行われていた風習です。中国や台湾、沖縄地方に見られます。古くは中国の明代にさかのぼる風習を受けたものともいわれています。

 そして神聖な文字の書かれた紙を燃やす専用の焼却炉を「惜字炉」とか「焚字炉(ふんじろ)」と呼びます。沖縄以外では3例あり、うち2例は長崎市のもので、残る1例が大阪市天王寺区の清寿院境内にある惜字炉です。

 かつては『摂津名所図会大成』に「関帝堂」として大きく取り上げられる黄檗宗寺院の清寿院は南京寺とも称され、幕末には川口の中国人居留地の人々から特に厚く信仰されました。惜字炉は、明治20年(1887)に中国人信者の寄進によって建立されたもので、一辺約70cmの六角形の炉です。創建以来、字紙を供養して焼却する炉として使用する習俗が清寿院(関帝廟)信者によって維持され、その中心となる象徴的な存在です。

 阪神大震災による倒壊後の修復で、背面を除く5面に設置されていた陰刻銘を持つ砂岩製の石版は、剥落が進んでいるため、修復した炉とは別に保管されています。

 ちなみに前出の老僧のような方もほとんどいらっしゃらなくなったと思います。このような文章を書いている私も、お恥ずかしいことですが、学生時代に中国文学を学び漢字の尊さを知っていながら、今では本も書類も平気で床に置いています。また、時によってはまたぐことすらあります。猛反省です!

 この機会に文字のなんたるかをもう一度よく考え直すようにします‼︎






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