四頭茶会

更新日:2019年10月8日


去る四月二十日、京都建仁寺(けんにんじ)で開山栄西(ようさい)禅師の誕生を祝い、その遺徳を偲ぶ行事として行われている四頭(よつがしら)茶会に参加した。栄西禅師は二度にわたり当時南宋(なんそう)と呼ばれていた中国に渡り、わが国に本格的な禅を最初に伝え、また茶樹の栽培と喫茶の風習を弘めている。本来、開山忌(かいさんき)に行われていた「室中斎(しっちゅうさい)(方丈斎(ほうじょうさい))」の前半部分を省いたものを、昭和29年(1954)に禅師の降誕会(ごうたんえ)にあわせ四頭茶会として一般公開したのが始まりである。なお、山内塔頭では釜が掛けられ、点心が給される。


特為茶

 室中斎とは、建仁寺に限らず大徳寺(だいとくじ)や妙心寺(みょうしんじ)等の臨済宗(りんざいしゅう)の大きな寺院で、開山忌の法要の後、重要な役割をつとめた僧を対象に、方丈中央の板張りで周囲に畳が敷かれた室中の間と呼ばれる部屋で行われる斎座(さいざ)食事)のことである。その後半に菓子と茶を進められるのが四頭である。禅院における修行や作法を記した清規(しんぎ)に、室中斎における呈茶を「特為茶(とくいちゃ)」としている。特為茶は、特別に招待された賓客に対し、格別に丁寧な作法でもてなすことをいう。そして、客は慎重な心構えでおろそかな態度で臨んではならないとも戒めている。なお、一般に振る舞う茶のことを「普茶(ふちゃ)」といっている。

 具体的には、客の地位により座位が定められ、あらかじめ茶の入れられた天目茶碗を天目台に載せて菓子を入れた縁高が銘々に配られ、四頭(四主頭)と呼ばれる四人の正客と相伴客に茶が点てられる。そこには南宋時代に行われていた禅院での喫茶の姿を伺うことができる。なお、四頭とは、主位(しゅい)・賓位(ひんい)・主対位(しゅたい)い・賓対位(ひんたいい)のことをいう。主位とは主人の座る位置を表し、室の正面に向かって右、賓位は客の座る場所のことで、正面に向かって左の座のことである。主対位とは主人の話し相手で、室の出入口の右、賓対位は客の話し相手で同じく右がその座となっている。四頭茶会はこの四名の正客およびそれに随伴する各八名の相伴客の計三十六名に呈される茶会である。

方丈の室礼と使用される道具

 次に現在、建仁寺で行われている四頭茶会を具体的に見ていく。方丈室中正面に、栄西禅師の頂相(ちんぞう)(肖像画)と、左右に室町時代の秋月等観(しゅうげつとうかん)筆になる龍虎図が掛けられる。その前の荘厳として、明時代の花卉鳥獣螺鈿卓(かきちょうじゅうらでんたく)に燭台(しょくだい)と香炉、花瓶(けびょう)の三具足みつぐそくが置かれ、その向こうに金地天目台に載せられた天目茶碗一双に茶が供えられている。室の中央には上段に青磁の香炉、下段に大香合が載せられた楼閣人物螺鈿卓(ろうかくじんぶつらでんじょく)が置かれている。これらの品はいずれも唐物である。

 室中入口両側に竹田益州(たけだえきじゅう元管長が描いた近江八景の小屏風である座屏(ざびょうが置かれ、四頭の座るべき位置を示す金襴で仕立てられた坐牌(ざはいが置かれている。菓子は春慶塗の縁高に椿の葉の上に載せられサイコロ形のこんにゃくの煮付と紅白の紋菓。なお、このこんにゃくは椎茸しいたけの煮付等を菓子として茶を飲んだ古風を今に伝えている。相伴客の縁高は人数分を長方形の塗の長盆に載せて運ばれる。あらかじめ茶の入れられた瀬戸釉の天目茶碗を塗の天目台に載せ、相伴客には曲盆(きょくぼんと呼ばれる丸くて大きな盆に同じく人数分が載せて出される。

茶会の次第

 客である会衆は室中隣の檀那間だんなのまで座席の配置図である照牌に従って着座順に控える。案内があると室中に四頭を先頭に相伴客八名がそれに従い、四列で計三十六名が「コ」の字形に配置された畳にいたる。侍香(じこうが室内に入り、三歩進んで両手を左右に広げて合掌する敬礼作法である問訊低頭もんじんていとうする。これは客が座につくようにという意味がある。客もこれに応えて問訊低頭しておのおの自座につく。四頭は自分の座に置かれた坐牌を四つに畳んで横に置く。

 客全員が座につくと侍香は中央の卓の前に至り、右膝を床に付け、左膝を立てる胡跪こきをして下段の大香合をとり、左のひじに抱え、右手で蓋を取って下に重ねる。体を起こして卓の左側を通って正面の栄西禅師の頂相の前で焼香をする。続いて卓の右側を通って再び卓の正面にいたり、左