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執筆者の写真木津宗詮

吐月峰

 吐月峰とは連歌師宗長が駿河国阿部郡丸子(静岡市丸子)に隠棲した柴屋軒(さいおくけん)の東方に位置し、特にその峰から出る月を賞したことから名付けられた山です。

 煙草盆に添えられる灰吹の別名を「吐月峰」といいます。灰吹は煙管の灰を落とし入れるための竹の筒で、現在の灰皿にあたります。煙草を一服つけたのち、煙管の雁首を下に向けて、灰吹きの縁にコツンと当てて吸い殻を落として用います。昔は吐月峰の竹を灰吹に好んで用いたことからこのように呼ばれました。また、峰から月が煌々たる姿を現すこともいいます。



 武者小路千家の灰吹は4寸(約12センチ)です。他の千家はそれより5分(1.5センチ)長いのが用いられています。寄付の煙草盆には白竹の灰吹と火入のみ添えられます。


寄付では自分の煙管で持参の煙草を吸うので煙管と煙草入は添えられません。腰掛待合と本席では青竹の灰吹と火入と煙管、煙草入、香火箸が煙草盆に添えられます。これは客が煙草を飲むというのは一服するという言葉の通りリラックスするという意味があります。これから一期一会の会で、亭主が心を込めて練った一碗の濃茶を一同で飲み、心を一つにして一座建立するのに、リラックスするという煙草を吸うことをはばかり、自分の煙管と煙草を寄付に置いていきます。ところが亭主は腰掛待合で客が待っている時に、どうぞ煙草で飲みながらゆったりとしてくださいという思いで煙管と煙草が添えて出します。そして濃茶も終わり、口直しに薄茶を差し上げる時には、お楽にしてくださいという思いて座布団が出され、また、煙草を吸ってリラックスしてもらうという意味でやはり煙草盆の皆具が出されるのです。そして寄付では何でもない白竹を出し、露地におりたら腰掛では青竹の灰吹にして、その青々した様に清々しい気分になってもらうという想いが込められています。





近年、健康上、喫煙は排斥されすっかり影を潜めてしまいました。大寄茶会でも正客の位置を示すぐらいの扱いをうげ、実際出されても煙管で煙草を吸うことがなくなりました。煙草盆自体を出さないことに家元が決めた流儀もあります。ちなみになぜやめたかというと、大寄茶会で、家元の目の前で煙草盆が駆られるのを二回見たことによりやめてしまったそうです。でも、私は煙草盆も実際使われなくても「どうぞお楽に」という亭主の思いのこもった道具ということでとてま意味があるものだと思っています。また、茶席に風情を添える大切な道具と一つでさ。使うことがなくてもいつまでも残して欲しい道具であると考えています。

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