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『松斎聞書 文化十一戌正月九日』4

一啜斎の廻り炭

 『宗守流茶事記』に、一啜斎時代の廻り炭についての手順が詳細

に記されている。長文であるが以下に紹介する。


    廻り炭之次第

一廻り炭は春の日、冬の夜抔などよし、客着座して、勝手口閉め置く。亭主手燭持ち出し、勝手口を明け、手燭脇に置く。客へ一礼して、手燭持ち出し、炉の前に直り、手燭前向へして、炉の方炉脇に置く。

釜の蓋閉め、帛紗にて釜の蓋、炉縁一遍ふき、それより勝手へ入り、炭台持ち出で定座に置く、炉の前へ直り、羽箒ばかり下ろし、釻掛けて釜敷紙懐中より出し釜上げ、真中より勝手へ寄□めに引き置き、釻は定座に置き、炉縁炉壇掃き、羽箒直に炭台へのせ、炭台取り、客付の方釜と並べ置く。勝手へ入り、底取素焼半田持ち出る。但し底取、長火箸添えてある。炉の右の方に直し、長火箸下ろし、半田の前の縁に掛けて、次に底取同断。半田の縁に掛けて長火箸取り、下火を半田へ上げ、細かき火は底取にて灰ともに掬い取り、長火箸にて向左右と角切る。それより前左右と角切る。また底取にて四方より底を取り、長火箸にて炉中を直し、灰多ければ今一遍も底を取る。長火箸にてよき下火をまた炉の中へ埋める。底取、長火箸を右の手三処に持ち添え、両手にて半田勝手へ持ち入るなり。それより灰焙烙持ち出で定座。それより炭台定座に置き、右の方へ直し、羽箒、香合と下ろし、五徳まず掃き、羽箒香合の脇に置く。炭台少し右へ寄せ、灰焙烙炉脇へ取り寄せ、炉中常の如く一遍灰する。その焙烙取り、左の手に持ち、釜と壁との間に置き、また一遍羽箒にて掃き、薫物焼き、この時客一礼して炉前による。炭台炉際へ寄せ、炭模様にかかわらずたっぷりとくべ、枝炭留炭まで仕舞う。羽箒にてまた掃き、香合、三ツ羽とも炭台へのせ、また初めの如く釜と並べて元の処ヘ直し、それより勝手へ入り、押し巴すみ上げ半田火箸ばかり添え持ち出で、炉際に置き、ちょっと炉中をうかがい、勝手口に直り、襖閉め、上客ヘ向て一礼。それより亭主末席に直る。上客次へ一礼して炉前に直り、長火箸を半田前の縁に掛け置き、炭を見て、亭主へ炭上げの一礼する。それより長火箸にて留炭、枝炭と順々に半田に上げて、但し胴炭は残す。それより桑柄の火箸左にて取り、右にて存じ寄りに炭する。桑柄の火箸元の如く炭台へ戻し、長火箸半田へ上げ、炉中の様子ちょっと見る。座を立ちて、亭主より末座に直る。座席順々に上へ繰るなり。二客目の人、三客目へ礼をして炉前に直り、万々仕方上客に同断。それより次に亭主の炭まで一巡は次礼あり。二遍目よりは礼に及ばず。炭の仕方は幾遍にても同断。仕舞上客か亭主かの炭にて留まるなり。留炭の挨拶亭主の節と思えば、亭主せぬ前、炉に向うとき、上客より御炭にて釜御掛なされ候と挨拶。亭主請いて炉中の炭を上げ、仕舞炉中これある下火を掘り出し、直ちに火移よき様に半田の炭にて直ぐに留炭するなり。但し上客より留め炭なれば、この処までしての座を立つなり。留炭を見て、座順元の通り直る。それより亭主半田、長火箸勝手へ持ち入り、炉前へ行き、炭台定座ヘ直し、羽箒、香合と下ろし、羽箒にて一遍掃き、香合脇に羽箒置き、灰焙烙を取り寄せ、炉中の灰を直し、灰焙烙定座勝手に置き、また一遍掃き、炉縁の脇へ三ツ羽直し、また薫物少し焼き、釜を掛けて釜敷紙懐中し、釻、香合、羽箒と炭台へ入れ、それより灰焙烙炭台と引くなり。座掃持ち出で、炉の辺りより勝手まで掃き込み、炉の前に直り、釜の蓋、炉縁とふき、手燭を持ちて退き、勝手口に座し、客へ一礼し終わるなり。炭上げ様、仕舞に置きゆく炭より段々に先へ〳〵あげるなり。薫物は初め焼くともよし。胴炭を動かす事は、上客か亭主かに限るなり。昼の仕方別義なし。手燭なきまでなり。


 現行では、最初に炭斗(炭台)を持ち出す前に釜の蓋を閉めて帛紗で釜蓋と炉縁を清めるのでなく、炭斗を持ち出してから釜の蓋を閉め、帛紗で釜蓋と炉縁は清めることはしていない。半田を持ち出して長火箸、底取の順で下ろすのが逆である。灰をまいたのちに釜と壁の間に置いているが、現行は釜の横の釻の手前で位置が若干異なる。一巡目に初客が炭をついだのち、亭主の末座についている。現行は元の座に着き、他の千家と同様である。現在流儀で行われているのは、のちの時代に独自に変えたと考えられる。現行では、正客が連客にはかり、亭主に挨拶をして仕舞いとなるが、一啜斎時分は、正客、亭主のふた通りの仕舞い方があった。そして座掃で掃き込むということも異なる。式法においては大きな違いはないが、春の日や冬の夜などに相応しいというのが独特である。また手燭の扱いを明記していることから夜分にしばしば行われていたことが窺うことができ誠に興味深い。


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