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執筆者の写真木津宗詮

ホトトギス

ホトトギスは、杜宇、杜鵑、時鳥、子規、不如帰、蜀魂、田鵑などたくさんの異名があります。ウグイスの巣に自分の卵を産んで育てさせる”托卵''の習性で知られています。

5月ごろ、インドや中国南部から日本まで渡ってきます。ツバメなど他の渡り鳥よりも渡来時期が遅いそうで、托卵するのに、対象とするウグイスの繁殖が始まるのにあわせることと、毛虫類を餌とするため、早春に渡来すると餌とする毛虫がいないことによるようです。

けたたましい鳴声で、「キョッキョッ キョキョキョキョ!」とか、「ホ・ト・…・ト・ギ・ス」とも聞こえ、ホトトギスの名前の由来もこの鳴声によるという説があります。この鳴き声の聞きなしとして「本尊掛けたか」や「特許許可局」や「テッペンカケタカ」が知られています。

昔から夜に鳴く鳥として珍重され、その年に初めて聞くホトトギスの鳴き声を初音といい、これも珍重しています。『枕草子』ではホトトギスの初音を人より早く聞こうと夜を徹して待つというくだりがあります。

ホトトギスの異名の杜宇や不如帰、蜀魂、田鵑は中国の古典によります。古代蜀の国王杜宇は、宰相の謀反によって逃亡し,復位を計るも果たせず,魂がホトトギスになったとあります。旧3月になると農民に種蒔きの時期を鳴いて知らせたとあります。また今も「不如帰(帰るにしかず)」と鳴いている、ということからホトトギスの別名になっています。

和歌でも「死出の田長(しでのたおさ)」と読みます。日本では田植えのころにあの世からやってきて、かん高い声で鳴き、あたかも田植えをしているお百姓に「働け!働け!怠けるな!」と督励しているように思ったことによります。これも蜀の杜宇の話しによるのでしょう。

なお、ホトトギスは夏の鳥で、旧暦4月立夏にやってくる鳥としていました。この和歌もそのことを踏まえたものです。実際、ホトトギスは人の作った暦に合わせてやってくるのではありません。旧暦3月春にやってきて鳴くこともあります。それを和歌では、ホトトギスが耐えかねて思わず発する声を「忍び音」としています。人間の都合に合わせるホトトギスにとっては迷惑なことですね。



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