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赤膚焼立鹿茶碗

執筆者の写真: 木津宗詮木津宗詮

春日大社元宮司水谷川忠麿好みの赤膚焼立鹿茶碗。御本立鶴茶碗をもとに、鶴を春日大社の神鹿を下絵とした馬上坏です。

水谷川忠麿は公爵近衛篤麿の四男で、大叔父で藤原氏の氏神である春日大社元宮司の男爵水谷川忠起の養子となりました。忠起没後は男爵となり貴族院議員に就任します。

水谷川忠起は藤原氏の氏寺興福寺一乗院の最後の門跡で、のちに還俗して水谷川家初代となり、春日大社の宮司を勤めることになります。一乗院は、忠起の前の門跡尊融親王(久邇宮朝彦親王)が、初代宗詮に茶の湯を師事していた縁で、忠麿は武者小路千家先先代愈好斎に入門して愈好斎の門下となります。そうしたことから兄の近衛文麿も同様に愈好斎に入門しています。

水谷川忠麿は、戦後最初の春日大社宮司となり、談山神社の宮司も勤めています。三千家輪番の春日大社の献茶は愈好斎が最初に奉仕し、職員も武者小路千家の茶の湯の稽古をしています。その後、紆余曲折がありましたが、現在は私が職員の稽古に赴いています。木津ともゆかりの深い神社でもあります。

毎年、妻恋する鹿の季節ということでこの茶碗を稽古に使うことにしています。とても薄作りで品のある茶碗です。

奥山に紅葉踏みわけ鳴く鹿の声きく時ぞ秋は悲しき


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