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10月6日 稽古場の床

建仁寺派元管長竹田穎川の兎画賛を掛け、秋草種々を手付籠に入れました。


北討南征第二春王師

除暴凱歌新

    己卯歳旦 古渡併題



北討南征第二春、王師暴を除き凱歌新たなり


北を討伐し、南を征伐し二回目の春を迎えた。天皇の軍隊は暴徒を除き凱歌も新たである。


昭和13年(1937)7月に盧溝橋事件がおき、これが発端となり日本国と中華民国間に、日中戦争が勃発しました。5月に国家総動員法が施行され、8月には第二次上海事変、11月には 日独伊防共協定成立成立し、日本は本格的に戦争に突き進んでいきました。この画賛は、翌年の昭和14年の元旦に認められた試筆です。日の丸を持ったまことに愛らしい兎の絵ですが、その賛はそうした時代背景を踏まえたものです。

僧侶である穎川がどのような思いで書いたものかは不明ですが、戦争中は宗教家も自身の思いとは別に国家・戦争に協力を余儀なくされた不幸な時代であったのは間違いのないことです。この軸をご覧になった中国の方、日本人にも不快な思いをされる方がいらっしゃるかと思います。あえてこれをご紹介するのは事実は事実として認識していただき、より良い方向に進むことを念願してのことです。

実際、このときに中国の民が望んだことか、確かに望んだ人もいたかもしれませんが、大半の人はそうでなかったはずです。満州国の「五族協和」、そして大東亜共栄圏の「八紘一宇」もまことに素晴らしい理念ですが、いずれにしろ日本の軍部や一部の人たちが自分達の都合でが主導したことです。また良いことをしているのだと信じて積極的に協力した人たちもいました。そしてこのことは中国の人が自ら唱えたものではありません。そのために不幸になった人がたくさんいました。反対に都合の良かった人もいたのも事実です。価値観は多様です。その人の立場によってその良し悪しは変わります。ただし、客観的に見ると、隣の家の人がお前のところを幸せな家にしてやるからと言って勝手に土足で乗り込んできて、こちらの言い分を無視して家政整理をするようなものです。一部の人が受け入れても他の人が納得するはずがありません。ただし東南アジアの植民地であった国々は戦後、宗主国と戦い独立を勝ち得ることの契機になったのは事実です。また、朝鮮半島や台湾の近代的なインフラやシステムを作ったのも事実です。なお、朝鮮は日韓併合以前の李氏朝鮮や大韓帝国があまりにひどい国であったのも事実です。事実を知ることはとても大切なことです。

私は決して当時の日本を正当化するつもりはこれっぽっちもありません。ただ、人は誰もがまず自分にとって都合の良いことを望むのは仕方のないことです。次に他者のことを考える。菩薩でない限り、人として生まれたかぎりこれは人の性(さが)です。悲しいことです。全ての人が良くなることは理想だと思います。でも少しでもみんなが幸せになるように努めなければならないと私は思っています。仏は他者に対して慈悲の心を説きました。その心は常に持ち続けなければなりません。

国によってはその事実を隠蔽し、自らに都合の良いことを主張し、また歴史を歪曲して教育している国もあります。今の日本は世界でも数少ない民主的な国です。だからそれらの国と同様のことを絶対にしてはいけません。国が国民のために国益を守ることは当然のことですが、決して歪めた形で国民に偽ることの無いように為政者や役人は対応してもらいたいと切望します。また、近年はSNSやネットで情報が氾濫しています。その中には正しいものもありますが、誤ったものもあります。マスコミも決して客観的な事実のみを報じているわけではありません。実際、つい最近某テレビ局の社員が、政治的意図をにおわさずに番組を制作するとの発言がありました。所詮、テレビも自分達の都合の良いように制作しているのです。そういう意味では誠に難しい時代になりました。同じ過ちを繰り返さず、過去の過ちを亀鑑として、前車の轍を踏まないようにしなければなりません。私たちは誤った情報に惑わされず、常に何が正しいか見極めていく目を持たなければなりません。

この軸をご覧になった中国の方、日本人にも不快な思いをされる方がいらっしゃるかと思います。あえてこれをご紹介するのは事実は事実として認識していただき、より良い方向に進むことを念願してのことです。

今朝も北朝鮮がミサイルを発射しました。まことに不安な状況にあります。過去の事実を客観的に踏まえ、より適切に対応して、素晴らしい未来を築いていきたいものです。


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