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4月17日 稽古場の床

本日の稽古の床は、武者小路千家12代家元愈好斎一行「松高白鶴眠」を掛けました。花はハナミズキとオウバイを愈好斎の銘になる信楽焼旅枕花入「閑居」に入れました。


掛軸の語の出典は、李白の「蕹(よう)尊師の隠居を尋ねる」という題の五言古詩です。 尋蕹尊師隠居 群峭碧摩天 逍遥不記年 撥雲尋古道 倚樹聴流泉 花暖青牛臥 松高白鶴眠 語來江色暮 濁自下寒煙 群峭(ぐんしょう)碧(みどり)天を摩(ま)し  逍遥(しょうよう)して年を記さず 雲を撥(ひら)いて古道を尋ね  樹に倚(よ)って流泉を聴く 花は暖にして青牛臥し  松高うして白鶴眠る 語り来れば江色暮れ  独り自ずから寒煙を下る


隠遁生活を険しい山中で過ごしている道士蕹尊師を李白が訪ねます。そこに至るには、雲をおし開き、古い道を尋ね歩きます。緑の群がるほどのたくさんの高く険しい峰は天をこするほどです。そして高く険しい峰が天をこするほどのことろにたどり着きます。

花は日に暖められ青い牛が臥せっている。松は高くその上に白い鶴が眠っていた。まさに喧騒の巷からはかけ離れた仙境というべきところでした。蕹尊師はこの険しい山中で隠遁生活を過ごし、気ままな生活をしつつ、神仙になるべく気を養い修行をしているのです。

ひとしきり清談を交わした李白は、心洗われ、ほんの少し神仙の境地に近づいたに違いありません。そんな自分を李白は満足しているのに違いないです。

尊師と語り合っているあいだに早くも川辺は暮れていました。そして李白ひとり冷たい夕もやに包まれた山路を下って行ったのです。


そんな李白は本当になんとも羨ましい限りです。コロナの影響を多大に受けて俗事に悩む日々を送っています。ふとどこか遠くの世界に行ってしまいたいと思う瞬間があります。

人の生きる世界を浮世とはよくいったものです。人なんて水に浮かぶ落ち葉みたいなものです。水の流れに翻弄されて人は生きていく。人の力なんて何の役にも立ちません。それでも弛まず努力を重ねることにより、ほんの少しでも流れを変えることもできるのだと私は信じています。たとえそれが「蟷螂(とうろう)の斧」であっても。ほんの少し生きることに疲れた時、この詩を読むと自分も李白の気持ちに少し近づけるように思います。李白とともに尊師のもとで遊ぶことができるのです。そしてわずかですが心が洗われた気分に浸ることができます。

せめて気分だけでも仙境に遊びたいとの思いでこの軸を掛けました。






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