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執筆者の写真木津宗詮

万歳三唱

 万歳三唱とはおめでたいときや嬉しい時、そのことが長く続くことを祈るときなどに両手を三回上げて「万歳」と三唱することをいいます。 「万歳」という語の出典は『漢書』武帝紀です。漢の武帝が元封元年(紀元前110)の正月に河南省の嵩山(すうざん)に登り、山を祀り天に祈って、天下泰平・国家の鎮護の祈りをささげたところ、同行の臣民一同も歓喜に包まれて思わず天子の寿を祝して歓呼の声を上げました。その歓呼の声は「万歳、万歳、万々歳」と嵩山の全山にこだましたとのことです。 わたしたちは何かおめでたいことがあると「万歳三唱」といって万歳を口にします。衆議院解散のときも議員が万歳三唱が恒例で行われます。万歳は「千秋万歳(せんしゅうばんぜい)」の後半を取ったものです。万歳は一万年のことで、元来、中国では皇帝の寿命を示す言葉であり、皇帝以外には使われませんでした。諸侯の長寿を臣下が願うときは「千歳(せんざい)」を使っていましたた。明代に専権を奮った宦官・魏忠賢(ぎちゅうけん)は自分の一党の者に「九千歳」と唱和させていたと伝えられています。  以前、韓国の朝鮮時代のドラマでで、王に対して万歳のことばを用いてるシーンを見たことがあります。これは史実ではありません。なぜなら、朝鮮時代の王は中国(明・清)皇帝の臣下であり、朝鮮半島の支配権を持っているだけの王であり、朝鮮は中国の「諸侯国」でした。朝鮮が「万歳」という言葉を使うことができるようになったのは、日清戦争で日本が勝利し、その後、朝鮮の独立がなり「大韓帝国」になってから用いられるようになりました。ですから朝鮮王朝では「千歳(チヨンセー)」ということばが用いられていました。なお、中国語では「万歳」を「ワンスイ」といいます。  万歳の読みですが、「万」は呉音で「マン」、漢音では「バン」です。「歳」は呉音では「ショウ」漢音では「セイ」になります。だから呉音で読むと「マンショウ」で、漢音だと「バンセイ」になります。「バンザイ」は重箱読みになります。ではなぜこのように読むかというと、「マ」では腹に力が入らないので敢えて呉音と漢音を交えた重箱読みにしたそうです。「バンザイ」と発音するようになったのは、明治22年(1889)2月11日の大日本憲法発布の時、青山練兵場での臨時観兵式に向かう明治天皇の馬車に向かって万歳三唱したのが最初です。当日は「万歳、万歳、万々歳」と唱和するはずでしたが、最初の「万歳」で馬車の馬が驚いて立ち止まってしまい、そのため二声目の「万歳」は小声となり、三声目の「万々歳」は言えずじまいに終わったことによるそうです。だからそれ以前の時代の映画やドラマで万歳三唱が行われていたら、それは史実ではありません。ちなみに、当初は文部大臣森有礼が「奉賀」を提案しましたが、連呼すると「ア・ホウガ(阿呆が)」と聞こえるという理由から却下されたという逸話が残っています。  過日行われた即位礼正殿の儀では、安倍晋三内閣総理大臣が令和の御代の平安と天皇陛下の弥栄(いやさか)をお祈りする「寿詞(よごと)」を読み上げ、引き続き総理のかけ声にあわせて万歳三唱が盛大に行われました。そして陸上自衛隊の礼砲部隊が御即位を祝う礼砲を21発発射しました。 写真は愈好斎の一行「山呼萬歳聲(山は呼ぶばんぜいのこえ)」です。



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