江南春望 杜牧
千 里 鶯 啼 緑 映 紅
水 村 山 郭 酒 旗 風 南 朝四 百 八 十 寺
多 少 楼 台 煙 雨 中
千里鶯啼(な)いて緑紅(りょくこう)に映ず
水村山郭(すいそんさんかく)酒旗(しゅき)の風
南朝四百八十寺(しひゃくはちじゅうじ)
多少の楼台(ろうだい)煙雨(えんう)の中
千里四方の広々とした野に鶯が鳴き渡り、木々の緑が紅の花の紅に映えている。水辺の村でも山沿いの村でも酒屋の旗が春風にはためいている。目を転じて呉・東晋・宋・斉・梁・陳の六つの王朝が都とした南朝の古都・金陵(南京)は480もの多くの寺々が立ち並んでいたという。今も多くの高くそびえる寺院の堂塔が煙雨のなかにそびえているのを望むことができる。 晩唐の詩人・杜牧(とぼく、803~853)の作。前半は晴天の下に広がる明るい農村風景。後半は春雨に濡れるかつて繁栄を極めた寺院の堂塔が並ぶ幽玄の世界。のどかに広がる田園風景と、緑と紅、酒旗の白は彩り豊かな色を加えています。そこに鶯の声と酒旗をはためかす春風、しかも登場人物は一人としていない。視覚と聴覚を動員した江南の春を描いた一幅の絵巻物です。 5年前の旧正月「春節」に浙江省の寧波の友人に招かれて年越しをしました。大晦日は彼の家族・親戚が集まる食事会。日付が変わり初詣、家族と共に元旦の食事をいただき、田舎のおばあさんのお宅で親戚のみなさんに新年の挨拶をしお祝いの食事。1日に3度も4度もご馳走をいただく日々でした。あたりは紅・黄・白の花に彩られたまさに「江南の春」でした。今も忘れることができません!
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