奈良の春日大社一の鳥居をくぐってすぐの参道右側の黒松を「影向の松」といいます。延慶2年(1309)の春日権現験記にも記された古い巨木でしたが、平成7年(1995)に枯れ、現在は巨大な切り株の横に後継樹の若木が植えられています。この「影向の松」は、春日大明神がこの松に降りて来られて萬歳楽を舞ったとされる木です。
能舞台の正面バック鏡板の松の木の絵のモデルがこの「影向の松」なのです。舞台正面にこの松があると想定し、舞台側に写ったものとされています。
「影向」とは神仏が仮の姿をとって現れること、神仏の来臨をいいます。
春日若宮神社のおん祭では、「松の下式」といって田楽や猿楽などの芸能者が鳥居の傍らのこの「影向な松」の前で芸を披露します。
なお、「影向の松」は北野天満宮の表参道の一ノ鳥居をくぐった右手にあもあります。こちらは立冬から立春前日までに初雪が降るとご祭神菅原道真公が降臨され、雪を愛でながら詩を詠まれるされています。現在でも初雪が降った日に筆と墨と硯を供えして道真公を偲ぶ「初雪祭」の神事が行われています。
松は常盤木で一年中青々として不変であることからめでたい樹とされています。その常盤木は神が降臨する依代となる神聖な樹でもあるのです。
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