青うめをうてばかつ散る青葉かな 蕪村
明かるい初夏の光りを受けて濃淡様々な若葉が茂ります。若葉の間にみずみずしい浅みどりで芳香のある実を梅は結びます。青梅はこれから梅雨にかけて大きく育ち、黄色く熟して収穫されます。。七十二候の芒種末候には「梅子黄」(梅の実が黄ばんで熟す)とあります。
梅は中国原産のバラ科サクラ属の落葉木です。和名の「ウメ」の語源は、中国語の「マイ・メイ・ムイ」を日本語的に発音したという説などがあります。いずれにしろもともと日本になかった植物ですから、日本語の名称はなく、中国語のそれがもとになっているのは間違い無いでしょう。同様のものに菊(キク)があります。なお、学名の「Prunus mume」は江戸時代の日本語の発音「ムメ」が元になっています。長崎の出島を通じてヨーロッパに紹介されたことからのようです。ちなみに英語では「Japanese apricot(日本の杏)」です。
中国では早くから酸味料として用いられており、塩とともに最古の調味料だとされています。料理の味加減や体や物事のぐあい・ようすを意味する単語「塩梅(あんばい)」とは、元々はウメと塩による味付けがうまくいったことを言った言葉です。
熟した梅の実はとても酸味が強く、また有毒といううことで食べません。一般的に梅干しや梅酒・梅酢・梅醤・ジャムなどに加工して食用にされます。そして甘露梅やのし梅などの菓子や、梅肉煮などの料理にも用いられます。近年は健康食品にも用いられています。また、毎年炎天下の中、北野天満宮では境内に実った梅を塩漬けして、回廊内側でカラカラに乾燥させて授与する正月の 大福梅」が作られています。
このように梅は正月の「松竹梅」をはじめ、庭木や盆栽として花を愛で、その実は梅干しや梅酒などの加工品として用いられています。また和歌や能、俳句などの文学や芸能にも取り上げられてきました。そうしたことから千年以上日本人とともに歩んできた植物の一つです。
京都鶴屋の「青梅」です。黒餡を緑の餅皮で包み、ヘラで青梅の形に仕上げたまことに「塩梅」のよいお菓子です。
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