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涙の地蔵

森鴎外の代表作『高瀬川』で、罪人が島流しにさせる時に無事に戻れるようにと祈ったお地蔵さん。

兄に迷惑をかけないようにと自殺しようとしたが、死にきれない弟を楽にしてやるためにとどめを刺した兄が島流しとなり、大阪に送られる船の中での役人との会話を描かれています。 

生まれてこの方貧しさのために苦労を重ねてきて、ようやく島流しになり、お上から支給される金、食べることができる。住むところも安定する。それを喜ぶ主人公と自らを重ね合わせる役人の心情が描かれた作品です。すべてが足りて満足している人がどれほどいるのか?金額は人それぞれですが、みんな日々の暮らしに追い回され、満ち足りた人なんてこの世にはいないのでは?みんなそれぞれに苦労を抱えているのが実情です。満たされても常に欲望が起きて際限ないです。だからみんな心は貧しい。苦しみもがく弟を楽にしてやる、いわゆる安楽死は犯罪なのか?今の日本が抱えている大きな問題のひとつです。医者であった森鴎外らしい内容です。

このお地蔵さんをみて、高校時代に読んだ『高瀬川』、現在の私たちが生きる時代に通じる作品です。


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