稽古の床飾りです。掛物は賀茂季鷹賛「朧月画賛図」です。花は福鼓椿と八重山吹、花入は9代好々斎室宗栄の竹船花入「かいつぶり」。
季鷹の賛は、
佐保姫の霞の袖に包みても
匂ひ溢るる春の夜の月
佐保姫とは春を司る女神です。和歌では佐保姫は白く柔らかな春霞の衣をまとい、佐保山にかかる薄衣のような春霞は佐保姫が織り出します。なお、竜田山の紅葉は竜田姫が染めるというふうに詠まれます。春を司る女神の佐保姫がいくら衣の袖に包んでも、包みきれないのが春の月の美しさと気品です。
五行説では春は東の方角にあたり、平城京の東に佐保山がありそこに宿る佐保姫を春の女神と呼ぶようになったそうです。それに対し秋を司る女神を竜田姫(たつたひめ)といいます。紅葉で有名な竜田山は平城京の西に位置し、西は秋に通じることからです。他に夏を司るのが筒姫(つつひめ)、冬を司る女神を宇津田姫(うつひめ・白姫・黒姫)といいます。いずれも平城京の南北にある山によります。なおこの二神は今日ほとんど知られていません。ちなみに中国では四季を司る神は女神ではなく、春は青帝(せいてい)、夏は炎帝(えんてい)、秋は白帝(はくてい)、冬は黒帝の4人の男神をいいます。
私の大好きな軸のひとつです。
八十三翁
季鷹
佐保姫の霞の袖に
つ丶みても
にほひ
こほる丶
春夜月
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