からたちの花が咲いたよ。
白い白い花が咲いたよ。
からたちのとげはいたいよ。
靑い靑い針のとげだよ。
からたちは畑の垣根よ。
いつもいつもとおる道だよ。
からたちも秋はみのるよ。
まろいまろい金のたまだよ。
からたちのそばで泣いたよ。
みんなみんなやさしかったよ。
からたちの花が咲いたよ。
白い白い花が咲いたよ。
北原白秋の「からたちの花」です。「からたち・枳殻(きこく)」は、長江上流が原産で8世紀にわが国に伝わったミカン科のの落葉低木です。和名のからたちの名は唐橘(からたちばな)が詰まったものです。枝には長さ5センチにも及ぶ鋭いトゲがあります。そうしたことから防犯を目的に生垣に利用されます。そしてこの時期、甘い香りを漂わせる清楚な白い花をつけます花のあとには、産毛で全体を覆われた緑色の果実をつけ、秋には熟して爽やかな香りを放つ黄金色の実になります。ただし残念ながら強い酸味と苦味があるため食用にはなりません。
家元の生垣もからたちです。5年間住込修行した時にからたちの周辺を掃除をしました。そして何度もトゲで刺して痛い思いをしました。修行時代の嬉しかったこと悲しかったことが複合的に重なります。わたしにとって「からたち」は特別な樹です。
なお、白秋の「からたちの花」の作曲者の山田耕筰は幼い頃養子に出され、活版工場で勤労しながら夜学で学びました。耕筰は自伝で工場でつらい目に遭うと、からたちの垣根まで逃げ出して泣いたと述懐しているそうです。この歌は耕筰のこの思い出を白秋が詞にしたものとのことです。
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